さだめ

 私たちは、「大きな流れ」のなかにいます。私やあなたは、その「大きな流れ」の中の、「ただひとつのちっぽけな流れ」でしかありません。いえ、もしかして、その大きいと思っていた「流れ」すら、もっと大きな流れの小さいひとつなのかもしれない。そのもっともっと、ちっぽけな「流れ」ひとつひとつが、連なって連なって、弧を、そして螺旋を、えがくのです。そうして、理由もなく、何かに導かれるようにして、在るべきほうへ、繰り返されてゆく。ただひたすらに、繋がってゆくのです。

 それは、ずっと前から決まっていたことです。「始まっては終わる」ということを、私たちがちゃんと知らないだけです。「メビウスの帯」に、表と裏がないように、「終わり」なんて、きっとないのでしょう。「メビウスの帯」に、繋ぎ目がないように、「始まり」なんて、きっと忘れられてしまったのでしょう。なんてかなしくて、切なくて、哀れで、美しいのでしょう。

 それが、私たちの、『さだめ』というものなのだと思います。

 覚醒しそうな頭に、数字が飛び込んでくる。どこか遠くで、カウントダウンが始まった。

 私は、どうにか重い瞼を持ち上げると、そこには若い剣士がいた。私によく似た仮面と、群青の肌、金色を纏うつるぎに、夜のとばりのようなころも。良い眼をしている。何戦もこなして、嬉しさも悔しさも知っている眼だと思った。

 すこし周りを見渡すと、たくさんの星と銀河が見えた。私は、なぜか、懐かしいと思った。そういえば、私も若い頃、こうして、こういう場所で、いにしえの戦士と戦ったのを思い出した。

「コレが・銀河最強の・戦士デス…>」

 ああ、と、私はやっと、自分の役割を思い出した。今度は私が「こっちがわ」だと。私は初めて、「大きな流れのなかの、ちっぽけな流れ」でしかないのだというのが分かった。こうして、世界は紡がれて、螺旋を描いてゆくのだと思った。この世界は、繰り返しなのだと思った。私はそれを、美しいと思った。

 私は、かつて、いにしえの戦士と戦った。だから今ここにいる。あのいにしえの戦士と同じさだめを辿るなら。どうなるかは私がいちばん分かっている。それでも戦士は、戦いに全力をかけるのだ。それが誇りなのだ。

 思考を巡らせながら、私は、そうして、剣を強く握った。